水資源の保全

Conservation of water resources

基本的な考え方・方針

水資源は、人間を含めた生物の生存に不可欠な要素であり、社会経済システムの基盤でもあります。しかし、人口増加や経済発展などによる水ストレスの増大や水質汚染が問題となっています。
サカタインクスグループでは、水は事業活動に欠かすことのできない大切な自然資本であると認識し、水使用量の削減や適切な排水処理などによる環境負荷低減を図るとともに、水リスクの把握および低減に取り組んでいます。

ガバナンス

水資源ガバナンスは、代表取締役 社長執行役員を委員長とし、全取締役をメンバーとするサステナビリティ委員会が統括しています。また、サステナビリティ委員会の下位組織にあたる各種委員会において、当社グループにおける水資源保全への対応を含む各種リスクの把握、対応策の審議等を行っています。サステナビリティ委員会は、半期ごと(年2回)に開催され、水資源保全への対応を含む環境に関わる重要な方針や目標を承認するとともに、進捗を管理しています。
 
また、「リスク管理規定」に基づき、リスク・コンプライアンス委員会にて、水資源にかかわるリスクの把握と発生防止に取り組むとともに、リスク発生時に対応する体制を整備しています。リスクや対策についてはモニタリング、定期的な評価により、状況に応じた見直しを行っています。


▼ガバナンス体制

水資源ガバナンス体制

水リスクの分析

生産拠点の流域における水の供給不安や洪水の発生は、事業活動に大きく影響を及ぼすと予想されます。そのため、拠点ごとの水リスクを把握し、事業継続に向けた適切な対策の実施やBCP(事業継続計画)の制定などを行っています。
 
2023年度には、一次評価(スクリーニング)として、サカタインクスグループの全生産拠点(海外を含む計33拠点)を対象に、世界自然研究所(WRI)が開発・発表した水リスク評価ツール 「Aqueduct Water Risk Atlas」 の 「Aqueduct 4.0」 を用いて、水ストレスおよび河川洪水リスクの評価を行いました。

▼水ストレス評価結果(17カ国、33拠点) 表中の数字は拠点数

 リスクレベルは「極めて高い(>80%)」、「高い(40~80%)」、「中~高(20~40%)」、「低~中(10~20%)」、「低い(<10%)」の5段階に分類される。

極めて高い
(>80%)
高い
(40~80%)
中~高
(20~40%)
低~中
(10~20%)
低い
(<10%)
合計
アジア 日本 2 2 4
インドネシア 1 1
マレーシア 1 1
ベトナム 1 2 3
フィリピン 1 1
タイ 1 1 2
インド 2 2
バングラデシュ 1 1
中国 1 1 1 3
台湾 1 1
米州 アメリカ 2 1 1 3 7
カナダ 1 1
ブラジル 1 1 2
欧州 イギリス 1 1
スペイン 1 1
ドイツ 1 1
チェコ 1 1
合計 4 5 9 8 7 33

▼水ストレス評価結果(17カ国、33拠点) 表中の数字は拠点数

 リスクレベルは「極めて高い(>80%)」、「高い(40~80%)」、「中~高(20~40%)」、「低~中(10~20%)」、「低い(<10%)」の5段階に分類される。

極めて高い
(>80%)
高い
(40~80%)
中~高
(20~40%)
低~中
(10~20%)
低い
(<10%)
合計
アジア 日本 2 2 4
インドネシア 1 1
マレーシア 1 1
ベトナム 1 2 3
フィリピン 1 1
タイ 1 1 2
インド 2 2
バングラデシュ 1 1
中国 1 1 1 3
台湾 1 1
米州 アメリカ 2 1 1 3 7
カナダ 1 1
ブラジル 1 1 2
欧州 イギリス 1 1
スペイン 1 1
ドイツ 1 1
チェコ 1 1
合計 4 5 9 8 7 33

調査の結果、タイ(バンコク)、バングラデシュ(ダッカ)、中国(上海)、スペイン(バルセロナ)の4拠点の水ストレスレベルが「極めて高い」に該当することがわかりました。今後、これらの拠点については、優先して現状の把握と対策の立案を進めてまいります。
なお、国内においては、水ストレスが高い地域における施設や資産、それに伴う生産や収益はありません。
今後もストレスレベルにかかわらず、引き続き水資源の有効活用と適切な使用に努めます。

▼河川洪水リスク評価結果(17カ国、33拠点) 表中の数字は拠点数

極めて高い
(>80%)
高い
(40~80%)
中~高
(20~40%)
低~中
(10~20%)
低い
(<10%)
合計
アジア 日本 2 2 4
インドネシア 1 1
マレーシア 1 1
ベトナム 1 2 3
フィリピン 1 1
タイ 2 2
インド 2 2
バングラデシュ 1 1
中国 1 1 1 3
台湾 1 1
米州 アメリカ 2 2 3 7
カナダ 1 1
ブラジル 2 2
欧州 イギリス 1 1
スペイン 1 1
ドイツ 1 1
チェコ 1 1
合計 5 5 5 9 9 33

▼河川洪水リスク評価結果(17カ国、33拠点) 表中の数字は拠点数

極めて高い
(>80%)
高い
(40~80%)
中~高
(20~40%)
低~中
(10~20%)
低い
(<10%)
合計
アジア 日本 2 2 4
インドネシア 1 1
マレーシア 1 1
ベトナム 1 2 3
フィリピン 1 1
タイ 2 2
インド 2 2
バングラデシュ 1 1
中国 1 1 1 3
台湾 1 1
米州 アメリカ 2 2 3 7
カナダ 1 1
ブラジル 2 2
欧州 イギリス 1 1
スペイン 1 1
ドイツ 1 1
チェコ 1 1
合計 5 5 5 9 9 33

国内4工場 (東京、大阪、滋賀、羽生) および水ストレスレベル「極めて高い」に該当する5工場 (インドネシア(ジャカルタ)、ベトナム(ハノイ)、タイ(バンコク)、タイ(シンサコン)、バングラデシュ(ダッカ)) について、より詳細なリスク評価を実施すべく、東京大学発のスタートアップGaia Vison社の協力のもと、1.5℃および 4℃のシナリオにて洪水シミュレーションを行いました。Gaia Vison社の提供するWebアプリケーション「Climate Vision」(気候変動・洪水リスクマネジメントプラットフォーム)は、河川地形などの表現の正確性から、流域単位での評価に留まるAqueductと比較し、より精度の高い分析結果であると考えられます。
算出された浸水深から想定される設備被害率、営業停止日数をもとに、財務影響額を試算しました。

▼4℃シナリオで、100年に1度の発生確率とされる洪水が発生した場合の被害額

国内拠点 設備被害額 売上減少額 財務影響額合計
国内4工場
(東京、大阪、滋賀、羽生)
5,783百万円 7,257百万円 13,040百万円
海外拠点 設備被害額 売上減少額 財務影響額合計
インドネシア(ジャカルタ) 浸水深 0m
タイ(シンサコン) 浸水深 0m
タイ(バンコク) 1,422百万円 611百万円 2,033百万円
ベトナム(ハノイ)
バングラデシュ(ダッカ)

インドネシア(ジャカルタ)およびタイ(シンサコン)は、4℃シナリオで、100年に1度の発生確率とされる洪水が発生した場合の浸水深は0mと分析されたため、財務影響額には計上しておりません。

国内4工場では拠点ごとに、風水害発生時の行動基準を定めています。また、浸水を防ぐための対策として土嚢や止水板といった資器材を備蓄しています。
2024年1月には「BCP規程」を制定し、BCM分科会を設置しました。今後も、当社グループのリスク管理やBCMの推進に、より一層取り組んでまいります。

水使用量の削減

2022年度、当社は110千m3の水資源を装置洗浄や加熱・冷却、製品などに使用し、66千m3を排出しました。排水量のうち、公共下水道に61千m3(92.4%)、工場外排水処理場に3千m3(4.6%)排出し、河川には2千m3(3.0%)放流しています。なお、国内生産拠点において、水ストレスの高い地域からは取水していません。

※集計範囲:サカタインクス株式会社 工場、本社、地方事業所(事業所内関係会社を含む)

▼取水量 (水源別) (国内)

取水量 (水源別) (国内) 取水量 (水源別) (国内)

水質汚濁防止

当社では、工場内で発生した洗浄廃水などを排水処理設備で処理したのち工場外に排出することで、水質汚濁防止に努めています。また、管轄自治体が定める条例や協定などに基づいた水質検査を定期的に行い、排水水質の監視を実施しています。
測定値と排水量から算出したBOD、CODの推移を下のグラフに示します。2022年度の総量はともに0.2tでした。

▼BODとCODの推移 (国内)

BODとCODの推移 BODとCODの推移

目標

当社は、水の使用量削減に関して以下の目標を設定しています。

管理指標 基準年度 目標年度 削減目標
国内工場の水使用量 2023 2026 △3%
2029 △6%

※製品への使用、生活用水を除く

水資源の有効活用に向けた取り組み (国内)

法令の遵守

当社は、日本の水質汚濁防止法やPRTR制度で対象となる化学物質を「生態系や人間の健康に有害となりうる潜在的水質汚染物質」として特定し、その遵守状況をチェックしています。
排水については、水質汚濁防止法で定められた排出基準に基づき管理を行っており、国内の全工場で月に1回水質測定を実施し、BOD、SS、pHなどの分析を行い、監視しています。

2022年
水量および水質に関する環境関連法令・規制の違反件数 0件
上記に関連する罰金額 0円

水使用量削減に向けた取り組み

水使用量の削減に向けて次のような取り組みを行っています。

・ISO14001に基づいた節水の推進 (全社)
・製造設備のすすぎ水を洗浄水として再利用 (東京工場、大阪工場 / 紙・パッケージ事業部)
・タンク、配管内の残インキの絞り出しの徹底による洗浄水の削減 (東京工場、大阪工場 / 紙・パッケージ事業部)
・練肉機の洗浄水の一部を製品の水原材料として使用 (東京工場 / 紙・パッケージ事業部)
・インキ製造における工程の最適化による水使用量の削減 (滋賀工場 /機能性材料事業部)

水関連の環境保全コスト

当社の2022年度の環境保全コストのうち、水関連リスクの改善にかかるコストは以下の通りです。

2022年
事業エリア内コスト (水質汚濁防止設備の維持・管理費、環境負荷監視費) 30百万円

水使用量削減に向けた外部イニシアチブとの協働

当社は、2023年度よりCDP 水セキュリティ質問書に回答しています。