生物多様性の保全

Conservation of Biodiversity

サカタインクスグループは、「SAKATA INX VISION 2030」において「地球環境と地域社会を重視したESG・サステナビリティの取り組み強化」を重要な戦略とし、「持続可能な地球環境を維持するための活動」を重要課題の一つとして掲げており、地球環境を保護し人々が安全に健康で暮らせる社会を目指しています。
そのために、生産活動における環境負荷物質の排出削減や環境配慮型製品の積極的展開といった事業活動を通じて、社会課題の解決と持続可能な社会の構築に向けて取り組んでいます。

生物多様性に関する考え方

サカタインクスグループの事業活動はさまざまな自然資本がもたらす生態系サービスによって成り立っています。
当社は、環境基本理念で定めているとおり、持続可能な地球環境を維持することは最重要経営課題であると認識しています。企業活動において、サプライチェーン全体における生物多様性への依存と影響を把握し、その保全に向けた取り組みを推進します。

生物多様性に関する基本方針

社会活動の基盤となる生物多様性の保全とその持続可能な利用を目指し、これを実践するための指針として、2023年2月に「サカタインクスグループ 生物多様性に関する基本方針」を制定しました。

ガバナンス

生物多様性対応を含むサステナビリティ推進体制

生物多様性ガバナンスは、代表取締役 社長執行役員を委員長とし、全取締役をメンバーとするサステナビリティ委員会が統括しています。また、サステナビリティ委員会の下位組織にあたる各種委員会において、当社グループにおける生物多様性への対応を含む各種リスクの把握、対応策の審議等を行っています。サステナビリティ委員会は、半期ごと(年2回)に開催され、生物多様性への対応を含む環境に関わる重要な方針や目標を承認するとともに、進捗を管理しています。

また、「リスク管理規定」に基づきリスク・コンプライアンス委員会にて、生物多様性にかかわるリスクの把握と発生防止に取り組むとともに、リスク発生時に対応する体制を整備しています。また、リスクや対策についてはモニタリング、定期的な評価により、状況に応じた見直しを行っています。


▼ガバナンス体制

生物多様性対応を含むサステナビリティ推進体制

生物多様性への依存と影響の評価

事業活動と生物多様性の関係性

事業活動と生態系との関係性を明確にするため、「企業と生物多様性イニシアティブ (JBIB)」が開発した「企業と生物多様性の関係性マップ®」を参考に、当社製品のライフサイクルや土地利用などと生態系との関係を一覧できる「サカタインクスと生物多様性の関係性マップ」を作成しています。


▼関係性マップ

関係性マップ

この「関係性マップ」により、原材料調達、製造、輸送・販売、使用、廃棄・リサイクルの全過程において、事業活動が生物多様性に影響を与える可能性があるということがわかります。このような「生物多様性との関わりの見える化」により、生物多様性保全に対するさらなる意識向上と生態系に配慮した活動の推進に取り組んでまいります。

生物多様性への依存と影響の評価

生物多様性への依存関係と影響に関しては「ENCORE*」の産業グループ別評価を活用して、自社セクターおよびサブ産業グループ (素材、特殊化学品) における依存関係及び影響の概要を評価しています。

2023年に実施した「ENCORE」による評価では、依存関係においては、地下水、地表水の2項目への依存度が「高い」と評価されました。影響においては、GHG排出量、非GHG大気汚染物質、土壌汚染、固形廃棄物、陸域生態系利用、水質汚濁、水使用量の7項目への影響度が「高い」と評価されました。
今後は、依存度、影響度が高いと評価された項目を中心に、それぞれリスク評価や取り組みの開示を行ってまいります。

*ENCORE (Exploring Natural Capital Opportunities, Risk and Exposure):金融機関のネットワーク「自然資本金融同盟」と、国連環境計画世界自然保全モニタリングセンター (UNEP-WCMC) などが共同で開発した、依存関係及び影響の概要を可視化するツール。

直接操業におけるリスク評価と改善に向けた取り組み

「ENCORE」の調査により、事業活動と生物多様性との依存度・影響度が高いと評価された項目において、当社の直接操業におけるリスク評価の結果と改善に向けた取り組み状況は以下の通りです。

地下水・地表水への依存

水使用量・水質汚濁への影響

水は事業活動に欠かすことのできない大切な自然資本であると認識し、水使用量の削減や適切な排水処理などによる環境負荷低減を図るとともに、水リスクの把握および低減に取り組んでいます。

 ▮ 詳細は 水資源の保全ページ をご参照ください

GHG排出量・非GHGによる大気汚染への影響

2050年度におけるGHG (温室効果ガス) 排出量の実質ゼロを目指し、事業活動にともなうCO2排出量 (Scope1&2) を、2030年度に50%削減 (2013年度比) する目標を設定し取り組んでいます。2022年度のエネルギー使用量に伴うCO2排出量 (国内) は8,661t-CO2となり、2013年度比で30.5%削減しました。また、2013年度を100とした工場の排出量原単位は74となりました。
生産効率化の推進や省エネルギーに向けた工夫と改善として、生産拠点では低炭素電力の導入を進め、非生産拠点も含めて節電など継続して取り組みました。今後もエネルギー使用量削減に継続して取り組むとともに、Scope3の算出にともない、サプライチェーン全体のCO2排出量の把握と削減に努めます。
また、各工場で使用しているボイラーの燃料燃焼時に大気中へ排出されるNOxやSOxの排出量をモニタリングしており、燃料使用量の削減 (大気汚染物質排出量の削減) に努めています。

▮ 詳細は TCFD提言に沿った情報開示ページ 、 大気汚染物質排出量の削減 をご参照ください

生物多様性への影響

事業活動が周辺地域の生物多様性に与える影響を把握するため、全生産拠点 (海外を含む、計33拠点) について、生物多様性評価ツールであるIBAT*1を用いて評価を行いました。拠点からおよそ半径3km以内に生物多様性重要エリア (世界自然遺産、ラムサール条約湿地、IUCNカテゴリーⅠa、Ⅰb、Ⅱ、Ⅲ*2およびKBA*3) がないかを調査したところ、ラムサール条約湿地への近接が1拠点、IUCNカテゴリーⅡへの近接が1拠点、カテゴリーⅢへの近接が1拠点、KBAへの近接が4拠点あることがわかりました。

*1 IBAT (Integrated Biodiversity Assessment Tool):バードライフ・インターナショナル、コンサベーション・インターナショナル、IUCN (国際自然保護連合)、UNEP-WCMC (国連環境計画の世界自然保全モニタリングセンター) により開発・提供されている事業者が生物多様性のリスクを把握するためのツール

*2 IUCNカテゴリー:IUCN (国際自然保護連合) が保護地域に対してカテゴリー化を行っている
   Ⅰa:厳正保護地域、Ⅰb:原生自然地域、Ⅱ:国立公園、Ⅲ:天然記念物

*3 KBA (Key Biodiversity Area):生物多様性重要地域。鳥を指標に選んだ生物多様性の高い地域であるIBA (Important Bird and Biodiversity Area:重要生息環境) の考え方を鳥類以外の分類群に広げたもの

地域
(カッコ内は拠点数)
半径3km圏内に自然保護地域がある拠点数
世界自然遺産 ラムサール
条約湿地
IUCNカテゴリー KBA
Ⅰa Ⅰb
日本 (4) 0 1 0 0 0 0 1
アジア (日本を除く) (15) 0 0 0 0 0 0 2
米州 (10) 0 0 0 0 1 1 0
欧州 (4) 0 0 0 0 0 0 1
合計 (33) 0 1 0 0 1 1 4

各拠点について、2022年度は環境に関する法令違反や罰金などはなく、また事業活動にともなって周辺の生態系に負の影響を与えるような事例は確認されておりません。サカタインクスグループでは環境基本理念・環境基本方針ならびに生物多様性に関する基本方針を制定し、環境負荷低減ならびに生物多様性保全に向けた取り組みを推進しています。上記重要エリアへの近接が確認された拠点においては、より一層、生物多様性に配慮するとともに当社の事業活動による影響の有無などの調査を進めてまいります。

項目 2022年度
環境関連法令・規制の違反件数 0件
上記に関する罰金額 0円
項目 2022年度
環境関連法令・規制の違反件数 0件
上記に関する罰金額 0円

廃棄物の影響

工場の事業活動にともなって発生する廃棄物の事業所外への排出量をできる限り抑制するとともに、再使用やリサイクル (再資源化) を推進し、処分量 (非再資源化廃棄物) の削減に取り組んでいます。
国内事業所では廃インキ・廃溶剤、汚泥、廃プラスチック類などを削減し、2022年度の総排出量は1,802tと前年度の1,872tから3.7%削減しました。リサイクル率は99.8% (マテリアルリサイクル47.0%、熱回収分52.8%) となり、国内4工場 (東京・大阪・滋賀・羽生) でリサイクル率99.5%以上 (ゼロエミッション) を達成しました。

 ▮ 詳細は 廃棄物の削減 をご参照ください

土壌汚染の影響

国内生産拠点においては、土壌汚染対策法の調査対象となっている事業所はありません。
当社グループの事業活動では揮発性有機化合物 (有機溶剤等) を使用しているため、製造部門や研究部門などにおいては化学物質管理や国内環境法令についての社内講習や外部講師によるセミナーの受講など、漏洩事故の防止に向けた社内教育の取り組みを進めています。

生物多様性保全に向けた取り組み

サカタの森の保全活動

2014年に操業開始した滋賀工場では、周辺地域の自然環境との調和を図った「サカタの森」(およそ0.7ha) を工場敷地内に造成し、生物多様性の保全に取り組んでいます。
サカタの森は、琵琶湖や伊吹山などの豊かな自然に囲まれた地で、それらをつなぐ生態系ネットワークの形成に寄与する緑地や水辺を提供し、地域全体の生物多様性保全に貢献しています。「馴染みのある風景の創出」をコンセプトに、植栽には周辺の山林に見られる樹種を選定するなど、地域植栽を考慮しています。2023年に行った生態系調査では、希少種を含むさまざまな動植物が確認されました。

また、以下のような生物多様性に関する価値を有する場として、令和5年度後期に環境省の「自然共生サイト*」に認定されました。

  • 生態系サービスの提供の場であって、在来種を中心とした多様な動植物種からなる健全な生態系が存する場
  • 希少な動植物種が生息生育している場あるいは生息生育している可能性が高い場
  • 越冬、休息、繁殖、採餌、移動(渡り)など、動物の生活史にとって重要な場

今後もモニタリングや保全活動を継続するとともに、生態系のさらなる保全に努めます。

* 自然共生サイト: 2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする目標である「30by30」の実現に向けて、民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域を環境省が認定する制度。令和5年度より認定を開始し、前期には122カ所(35都道府県)、後期には62カ所(30都道府県)が認定された。

▼生態系調査
生態系調査
▼サカタの森
サカタの森

▼滋賀工場内で確認された希少な動植物

分類群 希少な種の選定基準
植物 カワヂシャ 環境省レッドリスト (NT:準絶滅危惧種)
レッドデータブック近畿 2001 (準絶滅危惧種)
哺乳類 カヤネズミ 滋賀県レッドデータブック近畿 2020年度版 (希少種)
鳥類 ケリ 環境省レッドリスト (DD:情報不足)
セッカ 滋賀県レッドデータブック近畿 2020年度版 (希少種)
両生類 ニホンアカガエル 滋賀県レッドデータブック近畿 2020年度版 (要注目種)
トノサマガエル 環境省レッドリスト (NT:準絶滅危惧種)
滋賀県レッドデータブック近畿 2020年度版 (要注目種)
昆虫類 ナツアカネ 滋賀県レッドデータブック近畿 2020年度版 (その他重要種)
コオイムシ 環境省レッドリスト (NT:準絶滅危惧種)
コガムシ 環境省レッドリスト (DD:情報不足)
ナツアカネ
ナツアカネ
カワヂシャ
カワヂシャ

[エノキやススキの保全]

林縁部に生育する自然植生の構成種「エノキ」や里地里山を指標する二次的な植生である「ススキ」をマーキングして、保護・育成を行っています。

エノキ
エノキ

[外来種の駆除]

周辺地域から種子が運ばれて定着したと考えられる滋賀県指定外来種ワルナスビには棘があり、社員や動物、昆虫類がけがをする可能性があるため、伐根による駆除を行っています。

ワルナスビ
ワルナスビ

各拠点での生物多様性保全活動

SDGsの17の目標の1つである「海の豊かさを守ろう」の達成に貢献するため、環境省と日本財団が主催している全国一斉清掃キャンペーン「海ごみゼロウィーク」に参加しています。2023年6月に神奈川県平塚市の海岸にて社員29名が参加し、食品や日用品のパッケージ、ペットボトル、空き缶などのごみを65袋分回収しました。また、2023年10月に大阪府堺市の海岸にて実施した際には、社員35名が参加し、ごみ45袋分を回収しました。

▼神奈川県平塚市の海岸での清掃活動
神奈川県平塚市の海岸での清掃活動
▼大阪府堺市の海岸での清掃活動
大阪府堺市の海岸での清掃活動

FSC認証紙の使用

森林に配慮した用紙 (FSC認証紙) の使用により森林資源の保全に配慮しています。

ステークホルダーとの協働

当社は生物多様性保全活動のさらなる推進に向けて、以下のイニシアティブに参加しています。

また、以下の団体の環境保全活動を支援しています。

2030生物多様性枠組実現日本会議 (J-GBF)から感謝状を授与

当社は、愛知目標達成と生物多様性の主流化を目指して2011年に設立された「国連生物多様性の10年日本委員会 (UNDB-J)」および UNDB-Jの後継組織として、ポスト2020生物多様性枠組等の次期国際目標・国内戦略の達成に向けて2021年に設立された「2030生物多様性枠組実現日本会議 (J-GBF)」の活動趣旨に賛同し、2017年よりサポーターとして支援してまいりました。2024年2月、当社の長年の支援に対して、J-GBF事務局の環境省自然環境局生物多様性主流化室より感謝状を賜りました。

J-GBF感謝状