トップメッセージ

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サカタインクス株式会社 代表取締役 社長執行役員 上野 吉昭

継続的な成長に向け、サプライチェーンのレジリエンスを高める

当社グループは、2030年を見据えた長期ビジョン“Create and Innovate, Care for the Earth, Color for Life”の実現に向けて、中期経営計画(CCC)として3つの期間に分けて取り組みを進めています。2025年度は事業拡大・収益力強化フェーズとして位置付けた中期経営計画(CCC-Ⅱ)の2年目であり、長期ビジョンに向けた道筋の中間点でもありました。この期間に、3期連続の増収増益を達成し、2021年度以降、売上高は毎期8%程度、営業利益は15%程度の成長を実現しています。この実績は各地域での着実な取り組みの積み重ねと、供給体制・製品力・投資の方向性がかみ合ってきた結果だと考えています。

こうした成長の一方で、2026年に発生したイラン情勢の影響により、ナフサ由来の材料を多く使用する印刷インキや加工品の原材料価格が高騰し、経営環境が大きく変化しました。CCC-Ⅱの最終年度である2026年度の業績は、計画に対し売上高は達成、営業利益は若干下回る見込みですが、引き続き増収増益を確保するべく、取り組んでいます。

当社グループは、主に飲料や食品、日用品などのパッケージに関わる製品を扱い、20を超える国と地域に拠点を構え、60カ国以上で事業を展開しています。人々の暮らしに密接しているエッセンシャルなビジネスであり、グローバル市場で供給責任を果たすことは極めて重要な責務であると認識しています。その観点からも、現下のイラン情勢を緊急事態リスクと捉え、石化由来の原料の安定調達、製品の安定供給、材料高騰への対応に向けて対策本部を立ち上げ、情報の収集と迅速な意思決定を行っています。

これまでも突発的なリスクに迅速に対応できる体制への変革、サプライチェーンのあり方の見直しを進め、レジリエンスを高めてきました。具体的には、地政学リスクを踏まえたBCP(事業継続計画)対応の強化、環境規制などを踏まえた製品群の拡充や高機能化など、パートナーシップを強化しており、材料まで含めた垂直統合を図っています。2024年11月に実施した米国Coatings & Adhesives Corporation(C&A社)の買収はこの一環であり、引き続き、グローバルで積極的にM&Aを進めていきたいと考えています。

加えて、垂直統合を進める中でサプライチェーン全体を統合的にマネジメントし、お客さまのScope3データの算出に貢献できる体制を構築していきます。そしてサプライヤーの皆さまには、引き続き、人権に対する当社グループの方針、取り組みを理解していただくとともに、CSR調達セルフアセスメント・ツールに独自の設問を加えたアンケート調査の実施、対話を通じて、信頼ある調達関係を一層強化していきます。

これらをさらに推進するために、グローバルな「全体最適」への視点の転換が今、まさに必要な時を迎えています。

「全体最適」の実現に向けた構造改革を進め、戦略製品でさらなる成長へ

私たちはこれまで、各地域に根ざした「個別最適」を方針として営業と技術が一体となってお客さまの課題に向き合ってきました。この姿勢は当社の強みの一つです。一方で、お客さまやさらにその先のブランドオーナーから世界各地で同水準のサービス・品質が求められるようになってきました。私は、この変化に確実に応えていく必要があると考えています。こうした要請に応えていくためには、地域の強みを生かしつつ、グローバル視点でサプライチェーンマネジメントを進化させていくことが重要です。そのために「個別最適」を土台に、「全体最適」の視点でサプライチェーンを強化する構造改革を進めています。

その具体的な取り組みの一つとして、現在、当社グループは地域別のセグメントとしていますが、新たに「パッケージ」「メタル缶」「デジタル」「コーティング」などの製品フィールドでのセグメントを管理し、グローバルな動向をしっかり捉え、横軸を通して各地域における具体的な戦略を立案・遂行していきたいと考えています。

また、当社グループは、これまで「環境対応」をキーワードとして取り組んできましたが、この観点からもサプライチェーンを一層強化していきます。包装廃棄物の削減と循環型経済の促進を目的として2025年2月に発効した欧州の「PPWR(Packaging and Packaging Waste Regulation:包装・包装廃棄物規則)」など、グローバルで3R(リデュース・リユース・リサイクル)の動きが強まる中、これらの動向を的確に把握し、グループとして迅速に対応できる体制が必要です。

これまでも環境配慮型製品の展開に注力しており、植物由来材料を積極的に使用した「ボタニカルインキ」シリーズや、特殊な溶液に浸けて攪拌すると印刷されたインキが剥がれることでフィルムのリサイクル性を高める「ウォッシャブルインキ」、パッケージのモノマテリアル化に貢献する天然資源由来の素材に機能を付加したコーティング剤などを開発してきました。

「全体最適」の実現に向けた構造改革を進め、戦略製品でさらなる成長へ

また、外部企業と連携し、ケミカルリサイクルの取り組みにも注力しており、使用済みプラスチックの再資源化技術を開発する共同出資会社「株式会社アールプラスジャパン」に資本参加し、使用済みプラスチックの再資源化事業を推進しています。触媒を活用した熱分解技術により化学的に分解し基礎化学品へと変換し、その後にリサイクルすることで、環境負荷が少なく効率的なリサイクルを2030年に実現することを目指しています。このような「環境対応」に関する技術を一層磨き、製品群を拡張することが、広くお客さまのニーズに応え、事業拡大につながっていくと考えています。

長期ビジョンの実現に向けては、新規事業の育成にも取り組んでおり、インキ事業で培った「樹脂合成技術」「分散・加工技術」「印刷・塗工評価技術」を応用した素材の創出に向けて、開発の仕組みづくり、さまざまな企業や団体との連携、オープンイノベーション、スタートアップへの投資などを進めています。これまで新規事業の注力分野として「事業発展領域」「エレクトロニクス&エネルギー」「バイオベース・脱石化材料」「ヘルスケア」の4分野を注力領域として推進してきましたが、近年のAIの進化により変化する市場・業界動向を踏まえ、これらの取り組みを継続しながら、特に「エレクトロニクスケミカル」と「バイオケミカル」を成長戦略の軸として重点的に投資し、半導体工程に使われる高機能素材などの開発を加速していきます。

2027年に持株会社体制へ移行し、グローバル化を促進

経営において、ガバナンスの強化と、意思決定のスピード向上は、企業にとって重要な課題です。当社グループは、「グローバル連結経営のさらなる強化」を変革プロジェクトの一つとしていますが、2026年3月から監査等委員会設置会社へ移行し、2027年1月から持株会社体制へ移行することを決断しました。経営体制をさらに進化させ、意思決定のスピード感を高めるとともに、意思決定プロセスの妥当性を多面的に評価する狙いがあります。

持株会社には、横断的な戦略を立案する機能のほか、研究開発、財務マネジメント、人的資本マネジメント、品質管理を含めた生産技術といった機能を持たせます。一方、執行側においては、執行責任者への権限委譲を進め、現場のスピードを上げます。その上で、執行側にはプロセスの妥当性とレビューの質をより高い水準で求め、検討段階からプロフェッショナルな議論を重ねていきます。こうした取り組みにより、スピードと統制を両立する経営を実現していきます。

また、ガバナンス統制の一環として、グローバルでERPシステムの統一を進め、世界各地の拠点からデータを集約する体制を強化するとともに、AIの活用を広げることにより、マーケティング戦略の立案・遂行、キャッシュマネジメント、技術開発の高度化・迅速化を図ります。

これらの取り組みは長期ビジョンの実現に向けた構造改革の一環であり、一つの通過点です。新たな体制のもと、グローバルでサカタインクスグループが一体となって、経済性・社会課題対応・環境課題対応の3つの側面から、お客さまに提供する価値を高めていきます。

さらに、持株会社体制への移行にあたっては、例えば、日本にいながら米国のお客さまと対話し、欧州でものづくりをするといった視点を持ってビジネスを進めるクロスマネジメントが可能な組織にしていきます。そのために、社員にはグローバル企業としての自覚をより強く持ってもらいたいと考えており、CCC-Ⅱでは、求める人財像を「グローバルな視点を持った上で、自ら変革を起こし、周囲とともに挑戦を楽しめる人財」として、「多様性の受容」「挑戦を促す環境」「教育・育成制度の拡充」「ウェルビーイング」の4つを柱とする人財戦略を推進しています。

グローバル企業として、人財の多様性はさらに高まっていきます。外国人のマネジメント層への登用や世界各地で育成した人財の日本での登用、海外の大学生の日本での採用など、優秀な人財の獲得・登用をグローバルで強化していきます。

また、私は社長に就任してから、現場の社員と対話し、一人ひとりの声に耳を傾ける場として、「タウンホールミーティング」や「GENBA Walk」を実施してきました。構造改革を進めるにあたっては、社員とのコミュニケーションを一層深めることがこれまで以上に重要だと考えています。今後も対話を重ね、社員一人ひとりが主体的に変革に関わる組織づくりを進めていきます。

ROIC向上を推進し、企業価値を高めるため、変革を続ける

当社は資本コストを意識した経営を推進し、ROEを最も重要な経営指標の一つと位置付けており、役員報酬の業績連動部分については算出指標にROEを採用しています。CCC-Ⅱの最終年度目標として「ROE10%以上」を掲げていますが、2025年度は前年度より1.5ポイント改善し、10.0%となりました。

資本効率の向上に向けては、投下資本が生み出すリターンが資本コストを上回っているかを継続的に検証し、成長投資や株主還元などに対する資本の最適配分を進めるとともに、資本コストの低減を図っています。CCC-Ⅱのフェーズからは、ROICの向上に向けて、業務カテゴリー毎にROICツリーを策定し、ROICと業務のつながりを可視化しました。事業計画ではROICスプレッドをどのように高めていくか、販売・生産・購買・物流の各プロセスにおける取り組みについて議論を重ね、実践しており、これがROICの改善につながっていると手応えを感じています。

加えて、当社は1998年よりTPM[Total Productive Maintenance(全員参加の生産保全)]活動を実施し、生産システムにおけるあらゆるロスの削減、原価低減を追求していますが、今後、生産活動にとどまらず、購買、物流、販売プロセスにも横展開し、ROICの改善につなげていきます。

足元の株式市場における当社の評価を見ると、2026年4月現在、PBRは0.9~1.0倍、PERは9~10倍の水準で推移しています。早期に、PBRは1.0倍以上、PERは15倍以上とすることを目指します。より多くの投資家の皆さまと対話し、当社グループが目指す姿と進むべき方向性、事業活動を通じて社会課題・環境課題の解決に取り組むことで社会的価値・経済的価値を創出し、それが収益拡大へとつながる明確なストーリーをお伝えしていきたいと考えています。

2030年に向けて目指す方向性、そして、サカタインクスがどのような企業であるか、どの方向に向かうのか、企業活動はどのように行われるべきかを示す当社の企業理念「マインド イン マインド」の精神は変わりませんが、その捉え方は常に変化していきます。AIの活用によりインプットされる情報量、スピード感が大きく変化していく中、最適なアプローチを追求する必要があります。

当社グループの社員には、自ら変革を起こしていく人財になってもらいたいと考えています。キャリア公募制度やインターン公募制度に、積極的に手が挙がる動きは着実に広がってきており、社員一人ひとりの挑戦意欲の高まりを実感しています。今後はさらに、より多くの社員が強いパッションを持って自分自身で考え、チャレンジすることを期待しています。

ROIC向上を推進し、企業価値を高めるため、変革を続ける

私は、これからも常に先頭に立ち、変革を促していきます。グローバル市場の変化を見極め、現場の声に耳を傾けながら、長期ビジョンの実現、そして企業価値の向上に向けて、さらなる変革を進めていきます。引き続き、サカタインクスグループへの変わらぬご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。