TCFD提言に沿った情報開示

Information Disclosure in line with TCFD recommendations

当社グループは、「SAKATA INX VISION 2030」において、「地球環境と 地域社会を重視したESG・サステナビリティの取り組み強化」を重要な戦略とし、「持続可能な地球環境を維持するための活動」を重要課題の一つとして掲げており、地球環境を保護し、人々が安全に健康で暮らせる社会を目指しています。
そのために、生産活動における環境負荷物質の排出削減や環境配慮型製品の積極的展開といった事業活動を通じて、社会課題の解決と持続可能な社会の構築に向けて取り組んでいます。

TCFD提言に沿った情報開示

当社はTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明するとともに、賛同企業や金融機関が議論する場である、TCFDコンソーシアムに加入しました。これを機に、気候変動問題をはじめとするさまざまな社会課題の解決に向けて、これまでの取り組みをより一層充実させていくとともに、TCFDが提言する開示フレームワーク(気候関連のリスクおよび機会に関するガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)に沿った情報開示を積極的に進めてまいります。

TCFD提言で求められる情報開示

ガバナンス 戦略 リスク管理 指標と目標
要求項目 気候関連のリスク及び機会に係る組織のガバナンスを開示する 気候関連のリスク及び機会が組織のビジネス・戦略・財務計画への実際の及び潜在的な影響を開示する 気候関連のリスクについて組織がどのように選別・管理・評価しているかについて開示する 気候関連のリスク及び機会を評価・管理する際に使用する指標と目標を開示する
ガバナンス 気候関連のリスク及び機会に係る組織のガバナンスを開示する 戦略 気候関連のリスク及び機会が組織のビジネス・戦略・財務計画への実際の及び潜在的な影響を開示する リスク管理 気候関連のリスクについて組織がどのように選別・管理・評価しているかについて開示する 指標と目標 気候関連のリスク及び機会を評価・管理する際に使用する指標と目標を開示する

1. ガバナンス・リスク管理

気候変動ガバナンスは、代表取締役 社長執行役員を委員長とし、全取締役をメンバーとするサステナビリティ委員会が統括しています。また、サステナビリティ委員会の下位組織にあたる各種委員会において、当社グループにおける気候変動への対応を含む各種リスクの把握、対応策の審議等を行っています。サステナビリティ委員会は、半期ごと(年2回)に開催され、気候変動への対応を含む環境に関わる重要な方針や目標を承認するとともに進捗を管理しています。そのほか、「インターナショナル・アドバイザリー・ボード」でも気候変動対応に関する議論を行っています。

気候変動に起因するリスクは「リスク管理規定」に基づき、リスク・コンプライアンス委員会にて把握し、リスクの発生防止、対応する体制をとっています。リスクや対策についてはモニタリング、定期的な評価により、状況に応じた見直しを行っています。


▼気候変動対応を含むサステナビリティ推進体制

気候変動対応を含むサステナビリティ推進体制

2. 戦略

当社グループは、気候変動に伴うリスクや機会を経営上の最重要課題であると捉え、事業に大きな影響を及ぼすものと認識しております。国際的な研究機関である国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)の第6次評価報告書、および国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)のWorld Energy Outlook2022などの情報を参照し、1.5℃シナリオにおける移行リスク・機会、4℃シナリオにおける物理リスク・機会を分析し、その対応策を進めています。

産業革命以前に比べて世界の平均気温の上昇を1.5℃に抑えるシナリオにおいては、低炭素、脱炭素社会への移行に伴い、各種法規制の強化や市場の変化によるコスト増、売上減少が事業に影響を及ぼす可能性があります。このようなリスクに対して、当社グループは温室効果ガス(scope1&2)削減目標を定め、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、自社の生産プロセスにおける排出量削減のロードマップを策定し、生産効率化の推進、エネルギーの見える化、省エネルギー活動の推進、再生可能エネルギーの導入など継続して実施しております。また、低炭素、循環型社会に貢献するボタニカルインキや、パッケージ用ガスバリア剤などの機能性コーティング剤の製品の需要拡大は当社グループにとって事業拡大の機会であると捉えております。

産業革命以前にくらべ世界の平均気温の上昇が4℃となるシナリオにおいては、異常気象による台風や豪雨、洪水などによる自然災害により工場の停止や損傷、サプライチェーンの分断など物理リスクによるコスト増が事業に影響を及ぼす可能性があります。このようなリスクに対して、当社グループはグローバルなBCPの強化を進めております。また、熱中症の拡大による飲料水需要の増加に伴うパッケージ用インキの需要拡大や感染症の増加に伴う抗菌、抗ウイルス製品の需要拡大は、当社グループにとって事業拡大の機会であると捉えております。
このように、当社グループは、気候変動をリスクだけでなく機会と捉え、事業活動を通じて社会課題を解決することを目指してまいります。



シナリオ分析結果


 想定期間 2050年度まで
 参照シナリオ: 4℃シナリオ IPCC/RCP8.5
1.5 / 2℃シナリオ IPCC/RCP2.6, IEA/SDS,APS,NZE
 時間軸: 短期:1~3年
中期:3~10年
長期:10~30年
 シナリオ分析対象: 既存、新規事業

脱炭素社会への移行により発生するリスク (1.5℃シナリオ)

移行リスク 事業および財務への影響 影響度 可能性 時期 当社の対応
政策・規制 炭素税の増加 短~中期 太陽光パネルなど再生エネルギーの導入による自家発電の拡大
・滋賀工場、東京工場で太陽光発電を導入
・今後も再生可能エネルギーのさらなる導入を検討
◆省エネルギー活動の推進
・TPM活動の継続と深化による生産性向上(生産設備の効率化、製造条件の見直し)
・ボイラーの効率向上
・空調温度の適正化および効率向上
・非生産拠点の電気使用量、ガソリン使用量の削減
◆厳重な情報セキュリティ対策
・コンピュータウイルス対策や社内ネットワークへのアクセス制限
・サイバーセキュリティ対応による電力セキュリティの強化の検討
・温室効果ガス排出量削減目標が未達成の場合、炭素税の費用増加
新規、既存設備の低炭素化のための投資、改修費用増加 短~中期
・太陽光発電設備の導入費用増加
排出権取引制度における排出権の購入費用の増加 短~中期
・温室効果ガス排出量削減目標の達成に向け排出権の購入費用増加
ICE搭載車のCO2排出による物流コスト増加 中期
・ICE搭載車の排出ガスにかかる炭素税の費用増加
・EV化に伴う車や充電設備等の投資の費用増加
太陽光発電など電力網のサイバー攻撃による工場操業停止 中期
・工場操業停止に伴う売上減少
市場 低炭素化の遅延による市場競争力の低下 短~中期 環境配慮型インキ(ボタニカルインキ、リサイクル原料使用インキなど)の開発・販売
・ボタニカル製品のラインアップの拡充
・ボタニカル度向上に向けた製品開発
循環型社会に貢献する資源リサイクルシステムの構築
・印刷関連業界における廃棄物の回収から処理、資源の再生までの循環システムを構築し、サーキュラーエコノミーの実現を目標とする実証実験
新規事業開発(環境・バイオケミカル分野)
・温室効果ガス抑制に貢献するバイオマス系機能性材料の開発
原材料の価格変動リスクの影響の緩和
・原材料の価格動向を注視
・石油化学材料の削減
・調達先の集中や長期契約の締結を実施
・複数購買やグローバル調達等による原材料費の低減や安定調達を図る
・低炭素化へ貢献する製品開発が遅れた場合、市場競争力が低下し売上減少
 
原材料コストの増加 短~中期
-炭素税導入による影響
・Scope3のカテゴリ1で購入した製品(原材料)のCO2排出量分の炭素税が原材料費に加算された場合、費用増加
-バイオマス市場拡大による原材料の供給不安
・バイオマス由来原材料使用製品のコスト増加
 
中期
-化石燃料の供給不安および価格高騰
・石油由来原料使用製品のコスト増加
 
中期
-再利用の強化などによる原材料コストの増加
・再生材料を使用した製品のコスト増加
 
中期
技術 低エネルギー印刷方式への転換 中期 低エネルギー印刷インキの開発
・EB硬化型インキの開発
・UV硬化型インキの開発
・UV硬化型インクジェットインキの開発
パッケージの紙化への対応
・ガスバリアコート剤の開発
・ヒートシール剤の開発
・防湿・耐水・耐油・撥水・防滑など機能性ニスの開発
・低エネルギー印刷適応製品の開発・実用化に遅れた場合、事業機会の損失により売上減少
紙リサイクルの拡大 短期
・リサイクル紙適応製品の開発・実用化に遅れた場合、事業機会の損失により売上減少
印刷面積の縮小 短期
・ラベルレス化に伴うラベル用インキの売上減少
・パッケージ用インキの売上減少
評判 気候変動への対応や情報開示を怠ることによる投資家の評価低下 中期 積極的な気候変動対応の推進
TCFD関連情報の適切な開示
・投資家からの評価低下により株価が低下した場合、時価総額低下

気候変動による災害など物理的影響によるリスク (4℃シナリオ)

物理リスク 事業および財務への影響 影響度 可能性 時期 当社の対応
急性 自然災害による生産事業所操業の停止、サプライチェーンの寸断、インフラの損傷 中期 グローバルなBCP対応の強化
・代替拠点からの供給体制の構築、訓練の実施
・グローバルなネットワークを活用したBCP体制の構築
水リスク評価ツール「Aqueduct」を用いた定期的な調査
・水リスク(量や質に対するリスク、洪水発生、干ばつ、水ストレスなど)の調査を開始し、将来予測も含めて対応検討に取り組む
・洪水による工場操業停止に伴う売上減少
・洪水による工場設備被災の損害
・洪水・冠水対策の費用増加
生活者の暮らしが著しく制限され、消費活動低下 中期
・消費活動の低下により当社製品の売上減少
 
慢性 海水面の上昇による工場の操業停止 長期 IPCC評価報告書の情報を注視
The Climate Change Knowledge Portal (CCKP)を用いた定期的な調査
・猛暑日、降雨量変化を定期的に調査
気温上昇による労働環境悪化の防止
・各職場からの声をもとにした労働環境の改善の継続
素材全般に関する情報収集
原材料の価格変動リスクの影響の緩和
・「移行リスク 市場」 の項目と同対応
生物多様性の保全活動の推進
・生物多様性に関する基本方針を策定
・「30by30アライアンス」へ参加
・「クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)」へ参画
・国内外で、海抜の低い拠点の対策費用増加
平均気温の上昇による対策費用増加、生産性低下 長期
・熱中症対策の設備費用増加
・熱中症・感染症の増加による労働生産性の低下
植物由来原料の価格高騰 中期
・植物由来原料使用製品のコスト増加
石油由来原料の価格高騰 中期
・石油由来原料使用製品のコスト増加
森林火災の多発による紙用原材料の供給不安定化 中期
・紙および紙パッケージの減少による当社該当インキの売上減少
農産物や海産物などの減少 中期
・当社パッケージ用インキの売上減少

事業機会 (1.5℃ シナリオ、4℃ シナリオ)

事業機会 事業および財務への影響 影響度 可能性 時期 当社の対応
資源の効率性 プラスチック再利用に関連したビジネススキームの構築 中期 「株式会社アールプラスジャパン」、「ジャパン・サーキュラー・エコノミー・パートナーシップ(J-CEP)」への参画
・ウォッシャブルインキの開発
・リサイクル対応フィルム剥離材料の開発
・当社対応製品の売上増加
 
 
エネルギー源 電化、省エネ活動によるエネルギー効率の向上 中期 太陽光パネルなど再生可能エネルギーの導入による自家発電の拡大
・「移行リスク 政策・規制」の項目と同対応
省エネルギー活動の推進
・「移行リスク 政策・規制」の項目と同対応
・ CO2削減対策により、エネルギー原単位が減少
再生可能エネルギー導入によるCO2排出量削減 短~中期
・温室効果ガス排出量削減に向けて再生可能エネルギーを導入することで炭素税の費用減少
製品・サービス 環境配慮型製品の拡大 短~中期 SDGs対応循環型パッケージ向けインキの開発
・ガスバリア性コーティング剤「エコステージ」シリーズの開発
・機能性コーティング剤「ブライトーン」シリーズの開発
・ボタニカルインキシリーズの植物由来成分比率の向上検討
・水性インクジェットインキやUV硬化型インキの開発
・脱プラスチックによる紙パッケージの販売機会増加に伴うパッケージ用インキの売上増加
・脱プラスチックによる紙パッケージの販売機会増加に伴うバリア剤の売上増加
・食品保存機能ニーズの拡大に伴うガスバリア剤等の売上増加
・CO2排出量削減に貢献する製品の売上増加
・低エネルギー印刷用インキ(インクジェット・UV・EB)の売上増加
・リサイクル原料を使用した製品の売上増加
・紙リサイクルの拡大に伴うリサイクル紙適応インキの売上増加
再生可能エネルギー、電池産業の拡大 短~中期 新規事業開発(エナジーケミカル・エレクトロニクスケミカル分野)
・太陽電池などの再生可能エネルギー用途を想定した半導体・増感材料の開発
・IoTやモビリティ領域で活用が期待される導電性材料、絶縁性材料などの開発
・エナジーケミカル分野の製品の販売機会の増加
・エレクトロニクスケミカル分野の製品の販売機会の増加
 
 
市場 温暖化による熱中症の増加 短~長期 飲料向けパッケージインキの開発
・フレキソインキ、グラビアインキ、金属缶用インキ
・飲料水の需要拡大にともなうパッケージ用インキの売上増加
温暖化に起因する感染症の増加 中期 抗菌・抗ウイルス製品の開発
・抗菌・抗ウイルス製品の売上増加
レジリエンス BCP対応の強化 中期 グローバルなBCP対応の強化
・「物理リスク 急性」の項目と同対応
太陽光パネルなど再生可能エネルギーの導入による自家発電の拡大
・「移行リスク 政策・規制」の項目と同対応
省エネルギー活動の推進
・「移行リスク 政策・規制」の項目と同対応
・顧客からの信頼性向上、投資家からの評価向上による株価の上昇
再生可能エネルギー導入や省エネ対策の推進
・顧客からの信頼性向上、投資家からの評価向上による株価の上昇
その他 行動変容 短期 省エネルギー活動の推進
脱炭素への行動変容の啓発
・省エネ活動やScope3 カテゴリ6(出張)、7(通勤)のCO2排出量の削減などによる炭素税の費用減少

脱炭素社会への移行により発生するリスク (1.5℃シナリオ)

移行リスク 事業および財務への影響 影響度 可能性 時期 当社の対応
政策・規制 炭素税の増加 短~中期 太陽光パネルなど再生可能エネルギーの導入による自家発電の拡大
・滋賀工場の太陽光発電所は200万kWh、東京工場は3.7万kWh発電
 今後も再生可能エネルギーの有効活用を目的にさらなる利用を検討
◆省エネルギー活動の推進
・TPM活動の継続と深化による生産性向上
 (生産設備の効率化、製造条件の見直し)
・ボイラーの効率向上
・空調温度の適正化および効率向上
・非生産拠点の電気使用量、ガソリン使用量の削減
◆厳重な情報セキュリティ対策
・コンピュータウイルス対策や社内ネットワークへのアクセス制限
・サイバーセキュリティ対応による電力セキュリティの強化の検討
・温室効果ガス排出量削減目標が未達成の場合、炭素税の費用増加
新規、既存設備の低炭素化のための投資、改修費用増加 短~中期
・太陽光発電設備導入費用増加
排出権取引制度における排出権の購入費用の増加 短~中期
・温室効果ガス排出量削減目標の達成に向け排出権を購入費用増加
ICE搭載車のCO2排出による物流コスト増加 中期
・ICE搭載車の排出ガスにかかる炭素税の費用増加
・EV化に伴う車や充電設備等の投資の費用増加
太陽光発電など電力網のサイバー攻撃による工場操業停止 中期
・工場操業停止に伴う売上減少
市場 低炭素化の遅延による市場競争力の低下 短~中期 環境配慮型インキ(ボタニカルインキ、リサイクル原料使用インキなど)の開発・販売
・ボタニカル製品のラインアップの拡充
・ボタニカル度向上に向けた製品開発
循環型社会に貢献する資源リサイクルシステムの構築
・インキ溶剤や軽油の代替燃料になる有機化合物を空気中のCO2から合成する技術開発
新規事業開発(環境・バイオケミカル分野)
・温室効果ガス抑制に貢献するバイオマス系機能性材料の開発
原材料の価格変動リスクの影響の緩和
・原材料の価格動向を注視
・石油化学材料の削減
・調達先の集中や長期契約の締結を実施
・複数購買やグローバル調達等による原材料費の低減や安定調達を図る
・低炭素化へ貢献する製品開発が遅れた場合、市場競争力が低下し売上減少
 
原材料コストの増加 短~中期
-炭素税導入による影響
・Scope3のカテゴリ1で購入した製品(原材料)のCO2排出量分の炭素税が原材料費に加算された場合、費用増加
 
-バイオマス市場拡大による原材料の供給不安
・バイオマス由来原材料使用製品のコスト増加
 
 
中期
-化石燃料の供給不安および価格高騰
・石油由来原料使用製品のコスト増加
 
 
中期
-再利用の強化などによる原材料コストの増加
・再生材料を使用した製品のコスト増加
 
 
中期
技術 低エネルギー印刷方式への転換 中期 低エネルギー印刷インキの開発
・EB硬化型インキの開
・UV硬化型インキの開発
・UV硬化型インクジェットインキの開発
パッケージの紙化への対応
・ガスバリアコート剤の開発
・ヒートシール剤の開発
・防湿・耐水・耐油・撥水・防滑など機能性ニスの開発
・低エネルギー印刷適応製品の開発・実用化に遅れた場合、事業機会の損失により売上減少
紙リサイクルの拡大 短期
・リサイクル紙適応製品の開発・実用化に遅れた場合、事業機会の損失により売上減少
印刷面積の縮小 短期
・ラベルレス化に伴うラベル用インキの売上減少
・パッケージ用インキの売上減少
評判 気候変動への対応や情報開示を怠ることによる投資家の評価低下 中期 積極的な気候変動対応の推進
TCFD関連情報の適切な開示
・投資家からの評価低下により株価が低下した場合、時価総額低下

気候変動による災害など物理的影響によるリスク (4℃シナリオ)

物理リスク 事業および財務への影響 影響度 可能性 時期 当社の対応
急性 自然災害による生産事業所操業の停止、サプライチェーンの寸断、インフラの損傷 中期 グローバルなBCP対応の強化
・代替拠点からの供給体制の構築、訓練の実施
・グローバルなネットワークを活用したBCP体制の構築
水リスク評価ツール「Aqueduct」を用いた定期的な調査
・リスク(量や質に対するリスク、洪水発生、干ばつ、水ストレスなど)の調査を開始し、将来予測も含めて対応検討
・洪水による工場操業停止に伴う売上減少
・洪水による工場設備被災の損害
・洪水・冠水対策の費用増加
生活者の暮らしが著しく制限され、消費活動低下 中期
・消費活動の低下による当社製品の売上減少
慢性 海水面の上昇による工場の操業停止 長期 IPCC評価報告書の情報を注視
The Climate Change Knowledge Portal (CCKP)を用いた定期的な調査
・猛暑日、降雨量変化を定期的に調査
気温上昇による労働環境悪化の防止
・各職場からの声をもとにした労働環境の改善の継続
素材全般に関する情報収集
原材料の価格変動リスクの影響の緩和
・「移行リスク 市場」の項目と同対応
生物多様性の保全活動の推進
・生物多様性に関する基本方針を策定
・「30by30アライアンス」へ参加
・「クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)」へ参画
・生物多様性リスクの評価(IBATを使用した調査を実施し、各事業所周辺の状況を確認)
・国内外で、海抜の低い拠点の対策費用増加
平均気温の上昇による対策費用増加、生産性低下 長期
・熱中症対策の設備費用増加
・熱中症・感染症の増加による労働生産性の低下
植物由来原料の価格高騰 中期
植物由来原料使用製品のコスト増加
石油由来原料の価格高騰 中期
石油由来原料使用製品のコスト増加
森林火災の多発による紙用原材料の供給不安定化 中期
紙および紙パッケージの減少による当社該当インキの売上減少
農産物や海産物などの減少 中期
当社パッケージ用インキの売上減少

事業機会 (1.5℃シナリオ、4℃シナリオ)

事業機会 影響度 影響度 可能性 時期 当社の対応
資源の効率性 プラスチック再利用に関連したビジネススキームの構築 中期 「株式会社アールプラスジャパン」、「ジャパン・サーキュラー・エコノミー・パートナーシップ(J-CEP)」への参画
・ウォッシャブルインキの開発
・リサイクル対応フィルム剥離材料の開発
・当社対応製品の売上増加
エネルギー源 電化、省エネ活動によるエネルギー効率の向上 中期 太陽光パネルなど再生可能エネルギーの導入による自家発電の拡大
・「移行リスク 政策・規制」の項目と同対応
省エネルギー活動の推進
・「移行リスク 政策・規制」の項目と同対応
・CO2削減対策により、エネルギー原単位が減少
再生エネルギー導入によるCO2排出量削減 短~中期
・温室効果ガス排出量削減に向けて再生可能エネルギーを導入することで炭素税の費用減少
製品・サービス 環境配慮型製品の拡大 短~中期 SDGs対応循環型パッケージ向けインキの開発
・ガスバリア性コーティング剤「エコステージ」シリーズの開発
・機能性コーティング剤「ブライトーン」シリーズの開発
・ボタニカルインキシリーズの植物由来成分比率の向上検討
・水性インクジェットインキやUV硬化型インキの開発
・脱プラスチックによる紙パッケージの販売機会増加に伴うパッケージ用インキの売上増加
・脱プラスチックによる紙パッケージの販売機会増加に伴うバリア剤の売上増加
・食品保存機能ニーズの拡大に伴うガスバリア剤等の売上増加
・CO2排出量削減に貢献する製品の売上増加
・低エネルギー印刷用インキ(インクジェット・UV・EB)の売上増加
・リサイクル原料を使用した製品の売上増加
・紙リサイクルの拡大に伴うリサイクル紙適応インキの売上増加
再生可能エネルギー、電池産業の拡大 短~中期 新規事業開発(エナジーケミカル・エレクトロニクスケミカル分野)
・太陽電池などの再生可能エネルギー用途を想定した半導体・増感材料の開発
・IoTやモビリティ領域で活用が期待される導電性材料、絶縁性材料などの開発
・エナジーケミカル分野の製品の販売機会の増加
・エレクトロニクスケミカル分野の製品の販売機会の増加
市場 温暖化による熱中症の増加 短~長期 飲料向けパッケージインキの開発
・フレキソインキ、グラビアインキ、金属缶用インキ
・飲料水の需要拡大にともなうパッケージ用インキの売上増加
温暖化に起因する感染症の増加 中期 抗菌・ウイルス製品の開発
・抗菌・抗ウイルス製品の売上増加
レジリエンス BCP対応の強化 中期 グローバルなBCP対応の強化
・「物理リスク 急性」の項目と同対応
太陽光パネルなど再生可能エネルギーの導入による自家発電の拡大
・「移行リスク 政策・規制」の項目と同対応
省エネルギー活動の推進
・「移行リスク 政策・規制」の項目と同対応
・顧客からの信頼性向上、投資家からの評価向上による株価の上昇
再生エネルギー導入や省エネ対策の推進
・顧客からの信頼性向上、投資家からの評価向上による株価の上昇
その他 行動変容 短期 省エネルギー活動の推進
脱炭素への行動変容の啓発
・省エネ活動やScope3 カテゴリ6(出張)、7(通勤)のCO2排出量の削減などによる炭素税の費用減少

定量評価(1)【炭素税による財務影響額】


 ▮ 想定されるリスク

 炭素価格の上昇による操業コストの増加

 ▮ 算定基準

  • SBT基準の削減目標の基準年(2022年)のCO2排出量をベースに、目標年(2034年)に58.8%削減の目標が未達成、達成の場合について算定しました。
  • IEA の World Energy Outlook 2022 の Net Zero Emission シナリオにおける先進国の2030年の炭素価格 (140 USD) を使用しています。(2022年時のレート 1USD=110円で計算)
  • Scope2のCO2排出量はロケーション基準に基づいて算出していますが、今後マーケット基準に基づいて再計算する予定です。

算定条件

 ▮ 評価結果

  • 基準年からCO2排出量が変化しなかった場合の、目標年(2034年)の炭素税負担額: 7.1億円
  • SBT基準の削減目標を達成した場合の、目標年(2034年)の炭素税負担額: 2.9億円

→ 削減目標を達成した場合、4.2億円/年の操業コスト削減につながります。

 ▮ リスク低減に向けた対応

  • 生産効率化などによる省エネルギー活動の推進
  • 再生可能エネルギーの導入
  • 電力由来のCO2排出係数の削減  などに取り組みます。

定量評価(2)【洪水による財務影響額】


 ▮ 想定されるリスク

 洪水による工場設備被災の損害、工場操業停止に伴う売上減少

 ▮ 算定基準

  • 当社グループの全生産拠点のうち、国内4工場 および世界自然研究所(WRI)が開発・発表した水リスク評価ツール「Aqueduct Water Risk Atlas」の「Aqueduct 4.0」にて河川洪水リスクが極めて高いと評価された海外5工場について、東京大学発のスタートアップGaia Vison社の協力のもと、1.5℃および 4℃のシナリオにて洪水シミュレーションを実施しました。
  • 算出された浸水深から想定される設備被害率、営業停止日数をもとに、財務影響額を試算しました。

 ▮ 評価結果

4℃シナリオで、100年に1度の発生確率とされる洪水が発生した場合の財務影響額は以下の通りです。

※インドネシア(ジャカルタ)およびタイ(シンサコン)は、Gaia Vison社の気候リスク分析プラットフォーム「Climate Vision」にて浸水深は0mと分析されたため、財務影響額には計上しておりません。

 ▼4℃シナリオで、100年に1度の発生確率とされる洪水が発生した場合の財務影響額

国内拠点 設備被害額 売上減少額 財務影響額合計
国内4工場
(東京、大阪、滋賀、羽生)
57.83億円 72.57億円 130.40億円
海外拠点 設備被害額 売上減少額 財務影響額合計
インドネシア(ジャカルタ) 浸水深 0m
タイ(シンサコン) 浸水深 0m
タイ(バンコク) 14.22億円 6.11億円 20.33億円
ベトナム(ハノイ)
バングラデシュ(ダッカ)

 上記以外の拠点についても順次評価を行い、情報を更新していきます。

 ▮ リスク低減に向けた対応

  • 風水害発生時の行動基準の制定
  • 浸水防止用の資器材(土嚢や止水板など)の備蓄
  • BCP規程の制定とBCM分科会の設置  などを実施しています。

3. 指標と目標

当社は2021年に発表した長期ビジョンにおいて、2030年の国内における温室効果ガス排出量(Scope1&2)を2013年度比で50%削減と掲げてきましたが、さらなる高みを目指してパリ協定で示された1.5℃目標の水準が求められるSBTに取り組むことにしました。当社グループとして、2023年にSBTiへコミットメントレターを提出し、2034年の当社グループにおけるScope1&2を2022年度比で58.8%削減する目標を設定しました。
また、重要課題(マテリアリティ)として「研究開発・技術力の強化」を掲げており、その個別課題をCSV(共有価値の創造)製品の開発としています。たとえば、低炭素社会に貢献する植物由来成分を使用したボタニカル製品比率の向上や循環型社会に貢献する機能性コーティング剤(ガスバリア剤など)といった持続可能な製品ラインアップの拡充と2030年目標に向けたKPIを定めて、さまざまな取り組みを進めています。

▼自社のカーボンニュートラル実現に向けた目標

自社のカーボンニュートラルの実現

▼社会全体のカーボンニュートラルへの貢献

社会全体のカーボンニュートラルへの貢献

当社の取り組み

2023年度のエネルギー使用量に伴うCO2排出量(Scope1&2)は9,134t-CO2となり、2013年度比で26.6%削減しました。また、2013年度を100としたCO2排出量原単位は88となりました。生産効率化の推進や省エネルギーに向けた工夫と改善に、なお一層活発に取り組みました。生産拠点では低炭素電力の導入を進め、非生産拠点も含めて節電など継続して削減に取り組みました。

▼CO2排出量 (Scope1&2)

CO2排出量(単体)の推移と目標 CO2排出量(単体)の推移と目標

また、サプライチェーンにおけるCO2排出量の削減を検討、実施していくことに向け、Scope3の算定を行いました。
カテゴリ1(購入した製品・サービス)〈約72%〉、カテゴリ12(販売した製品の廃棄)〈約20%〉の割合が大きいことから、今後、カテゴリ1を主として削減検討を進めていきます。

▼サプライチェーン排出量 (Scope3)

サプライチェーン排出量(Scope3) サプライチェーン排出量(Scope3)

当社グループの取り組み

連結で事業活動に伴うCO2排出量(Scope1&2)を、2034年度に58.8%削減(2022年度比)する目標を設定し取り組みを開始しました。2023年度のエネルギー使用量に伴うCO2排出量は41,394t-CO2となり、2022年度比で3.4%削減しました。今後、目標達成に向け国内外の工場において、太陽光パネルの増設、新規導入を進めることで、再生可能エネルギーの利用を増やし、グループ全体でCO2削減に取り組んでいきます。

▼CO2排出量 (Scope1&2) の目標

CO2排出量(連結) CO2排出量(連結)

さらに当社グループは、2024年度における設備投資から、ICP制度を導入しました。
今後、ICP制度を投資判断基準の一つとして活用することで低炭素投資を推進し、脱炭素社会の実現に向けて、さらなるCO2排出量の削減に取り組んでまいります。

〈ICP制度の概要〉

 社内炭素価格: 15,000円/t-CO2
 制度対象: CO2排出量の増減に伴う設備投資
 運用方法: 対象となる設備投資計画によるCO2排出量に対して、社内炭素価格を適用し、金額換算したものを投資判断の参考とする

4. サステナビリティに貢献する当社製品


温室効果ガスであるCO2の排出量削減を目的に、インキ固形分中に10%以上の植物由来成分を含有するインキを展開しています。国内のフィルムパッケージ向けボタニカルインキシリーズの販売比率は6割近くまで増え、印刷会社やコンバーターのほか、一部のブランドオーナー、また消費者においても認知度が広がってきています。今後も海外展開の強化やボタニカル度(植物由来成分の比率)の向上などに取り組んでいきます。


高い酸素バリア性を有するコーティング剤を塗布することにより、内容物の酸化を抑制し食品ロスの低減に貢献します。また、複数の異種素材でバリア性を発現する必要がなくなるため、包材のモノマテリアル(単一素材構成)化による易リサイクル性の向上や、プラスチックの減量に貢献します。


近年、海洋プラスチックごみ問題の深刻化に伴い紙パッケージの利用が進められている一方で、紙はフィルムと比較して耐久性や保存性などにおいて劣っており、フィルムの代替として機能するには非常にハードルが高いのが実情です。当社ではこれらの機能を補うべく、耐水性、耐油性、防湿性、撥水性、防滑性、ヒートシール適性などを付与する機能性コーティング剤「ブライトーン」シリーズを展開し、パッケージの紙化に貢献します。


紫外線のエネルギーにより硬化し塗膜の形成を行うUVインキは、有機溶剤を必要としないためVOCを発生しない、省エネルギーな環境配慮型インキです。当社ではオフセット印刷用の「ダイヤトーン ドリームキュア」シリーズや、産業用インクジェット印刷用の製品等を展開しています。


アルカリ液処理で複層フィルムを剥離・脱墨し、フィルムのリサイクルを可能とする脱墨プライマーや、飲料用PETボトルラベルからインキを除去しボトル・フィルムの分離回収を可能にする脱墨インキを展開しています。