財務担当役員メッセージ
Message from the Director in Charge of Finance
財務と経営企画を担いながら、グループ全体の進むべき方向を設計する
私は1994年に当社へ入社して以来、一貫して財務・経理に携わってきました。日本では海外売上や海外取引、貿易に関わる業務を担当し、米国赴任時には現地法人の資金調達にも取り組んできました。2022年から経営企画部門を担当し、2025年からはグループ経営企画本部長として経営企画部と国際部を統括しています。2026年からは、経理部、情報システム部も担当しています。
その立場から、当社の財務とグローバルガバナンスに対するフォーカス、そして現在の取り組みについてご説明します。
世界20カ国以上で事業を展開する当社にとって、現地法人の業績や財務状態を的確に把握し、市場動向も踏まえながら、それぞれの成長性を見極めていくことは重要です。当社は食品・飲料・日用品のパッケージに用いられる印刷インキを提供しており、安定供給を強く意識して事業を運営しています。そのため、供給能力を常に把握し、計画的な投資を進めるとともに、サプライチェーン全体の安定と継続性を確保することが欠かせません。事業基盤を支え、必要な資金を適切に手当てしていくことが、財務の役割です。
また、市場の成長に合わせて当社自身も成長していくためには、成長が見込まれる事業や地域に資金を投じ、供給責任と成長の両立を図る必要があります。そのためにグループ全体で生み出した資金を集約し、最適に再配分していく仕組みが重要です。これは当社の成長を左右する最も重要なテーマであると認識しています。
「ROE10%以上」に向けて、資本コスト経営やROICを意識した事業運営を着実に実行
当社は持続的な企業価値向上に向けて、「ROE10%以上」の達成を掲げています。2025年度は営業利益152億円、売上高2,576億円と増収増益を実現し、収益性の改善を通じて事業基盤を強化した結果、ROE10.0%を達成しました。
今後も「ROE10%以上」を継続的に維持するためには、創出した利益を次の成長へ結びつけていくことが不可欠です。利益の拡大は自己資本の積み上がりを伴うため、利益成長に加えて資本効率を意識した運営が求められます。このため、資本コストを意識した経営を継続的に実行していきます。
このため、資本コストを意識した経営を継続的に実行していきます。
この考えのもと、当社では株主資本コスト8~9%、総還元性向50%を基準に、配当と自己株式取得を通じた株主還元を進めています。残る資金は成長投資に充て、資本効率の向上と持続的な企業価値向上を図っていきます。
2025年度は営業キャッシュ・フロー170億円、フリー・キャッシュ・フロー125億円となりました。こうしたキャッシュ創出は、この数年で進めてきた資本コスト経営やROICを意識した事業運営の成果だと考えています。
中期経営計画 (CCC-Ⅱ) で示した事業投資についての考え方
当社の成長を支える事業投資には、生産設備への投資が多く含まれます。中でも更新投資は既存のお客さまへの安定供給を支える上で最も重要です。そのため、設備の維持・管理を通じて更新投資のサイクルをできるだけ長くするとともに、環境負荷低減にも配慮した設備選択を行っています。また、近接したエリア内の複数拠点を地域単位で捉え、生産キャパシティや稼働率を把握しながら、拠点個別最適ではなく地域最適の視点で設備計画を進めています。
成長を支えるもう一つの柱がM&Aです。既存事業の未進出エリアへの進出に加え、今後は事業領域の拡大へと軸足を移していきます。2024年11月の米国C&A社の取得はその象徴であり、印刷インキに加えてコーティング剤や接着剤といった隣接分野を取り込むことで、新たな成長領域を拡大していきます。
株主還元は150億円+α (CCC-Ⅱ 3カ年累計) で総還元性向50%以上の実現に向けた運用
株主還元については、CCC-Ⅱの3カ年において総額150億円+αの還元を基本としつつ、業績やキャッシュ創出の状況に応じて追加的な還元を機動的に実施する方針としています。2025年度は1株当たり95円の配当と10億円の自己株式取得を実施し、総還元性向は49%となりました。2026年も2月に10億円の自己株式取得を実施しており、1株当たり100円の配当を予定しています。
近年は、資本効率や株主還元に対する市場の期待が高まっており、当社もその変化を強く意識しています。こうした環境を踏まえ、これまで段階的に株主還元の水準を引き上げてきました。2026年度に向けてはその到達を見据え、引き続き還元水準の向上に取り組んでいきます。
今後も、成長投資とのバランスを取りながら、資本効率の向上と株主還元の充実を両立させ、持続的な企業価値向上につなげていきます。
目指すべきゴールを共有し、グローバルガバナンスを強化する
私たちはグローバル企業として、各国拠点で価値観やアプローチが異なることを前提に、その違いを尊重しながらも、目指すべきゴールを共有することを大切にしてきました。
一方で、ガバナンスの面では本社が資本・情報・規律をどう握るかで課題もありました。しかし現在は、それらの重要性が当社の持続的成長を支える生命線として一段と高まっています。そのため、グローバル企業としてもう一段の成長を実現するために、2027年1月1日に持株会社体制への移行 (ホールディングス化) を予定しています。
これに伴い、財務をはじめとする組織の仕組みも見直し、制度整備を通じてガバナンスをもう一段強く機能させていきます。
一方で、その変化を各国の現地法人がどう受け止めるかは大きな課題です。国や文化の違いによるギャップを埋めるためには、透明性を高め、方針の本質まで理解してもらうコミュニケーションが欠かせません。
また、本社だけでなく、現地法人もグループの一員として責任を担い、ともに成長を喜べる関係を築く必要があります。当社は真の意味でのグローバル化という点ではまだ発展途上にあり、今後は海外ともフラットに対話できる企業文化を育てていきたいと考えています。

ポートフォリオマネジメントを本格化し、より成長力の高い企業グループを目指す
ホールディングス化を財務の視点で見ると、従来は地域軸での把握が中心でしたが、今後は事業軸で捉えていくことが重要になります。
そのためには、法人単位だけでなく事業単位まで掘り下げて成長性や利益貢献を把握し、将来伸びる事業へ重点的に資本を配分できる仕組みが必要です。現在、当社はその基盤となるグローバルベースの管理会計の仕組みづくりを進めています。
これらが整えば、投資判断はより明確かつ厳格になり、意思決定のスピードも高まります。ホールディングス化は本社が資本配分を担い、事業会社が各市場での執行を担うという役割分担を、より明確にしていくものだと考えています。
資本コストや株価を意識した経営の観点から見ると、当社が事業投資を強く意識する理由は明確です。当社は総還元性向50%以上の実現を目指す方針を掲げており、株主還元の充実を図りながら資本効率を維持・向上させるためには成長機会の創出が重要と考えています。
そのため、既存事業の成長に加え、事業領域の拡大による利益成長が不可欠であり、その有力な手段がM&Aと成長領域への投資です。必要な投資資金を調達し、資本を集約しながら成長分野へ機動的に配分していくことは、財務部門の重要な役割です。
従って、ROE10%以上を持続的に維持していくためには、これらの資本配分と投資を通じて利益成長を実現していくことが不可欠です。財務としては、そのための資本の調達と最適配分を担い、グループ全体の成長を支えていきます。
その前提には、グローバルガバナンスを確実に機能させることが必要です。だからこそ今、当社は仕組みを見直し、新たな体制づくりを着実に進めています。